最近、中国のICカードを日本のATMで使うと現金引き出しができない、買い物に使えないという問題が起きています。
その問題の原因になっているキャッシュカードの互換性問題について解説します。
磁気キャッシュカードの互換性問題
一見同じように見える世界のキャッシュカードですが、実は微妙に異なる様々な規格があって、そこには互換性の問題があります。
まずはICカードの前の世代、現在でも多く使われている磁気ストライプカード(カード裏面に黒い帯のあるカード)について。
日本の磁気カードはJIS規格、海外はISO規格
日本の磁気ストライプカードはJIS規格であるのに対し、海外の磁気ストライプカードはISO規格で、この2者は物理層で異なる規格となっていたため、そのままでは互換性がありません(参考記事)。
手元に海外発行の銀行キャッシュカードやクレジットカードがある方は磁気ストライプの部分を見比べて見ると、太さが違うことに気づかれるでしょう。もっとも、最近のキャッシュカード・クレジットカードは磁気部分が見えないようになっているものも多いですが…

日本のキャッシュカードのほとんどが海外で使えないのも、海外発行カードを受け付ける日本のATMが少ないのも、この日本独自の磁気ストライプ規格にも原因があるのです。
ちなみに日本のクレジットカードや国際デビットカードは、1枚のカードに日本規格と国際規格の2本の磁気ストライプを貼り付けるというハイブリッド方式を使って、海外でも使えるようにしています。
2本目はカードの表面に特殊な技術で貼りつけ、私たちからは見えないようになっているそうです。
ICキャッシュカードの互換性問題
ICチップつきキャッシュカードの時代になり、日本はIC部分については国際規格であるEMV規格に準拠したカードを発行するようにしました。
また、国内のICカード対応ATMは、海外発行のICチップ付きキャッシュカードに、規格上は対応(銀行として対応するかはまた別の問題)しています。とは言え、まだICカード非対応のATMも多いのが現実ですが…
EMV規格とPBOC規格
ただ、そこで独自路線を打ち出してきたのが中国、世界人口の5分の1を擁するだけあってかなり強気です。
中国銀聯はPBOC(中国人民銀行(中国人民银行))2.0規格という独自規格のICチップ付きカードを発行することを決定しました。

このPBOC2.0規格は、EMV規格をベースにしたもののため、端子部分の形状は全く同じですが、アプリケーション層での規格が異なるため、国内のICカード対応ATMやPOSはこのアプリケーション層の対応をしなければ銀聯カードに対応することができません。
まとめ:中国の銀聯カード規格は独自規格、日本側の対応待ち
ということで、中国の銀聯カードのICチップは独自の規格となっており、日本のATMやPOSが対応するまで、ICチップを利用した取引を利用することができません。
物理的な端子構造は同じなので、機器本体の改造ではなくアプリケーション側で対応すれば良い問題とは思えますが、今のところは問題の範囲が小さい(使えないのは銀聯IC「のみ」キャッシュカードだけで、銀聯クレジットカードは磁気部分で取引ができる)ため、日本のATM・POSメーカーがこの問題に取り組むのはしばらく期待できないかもしれません。
2016年10月:セブン銀行ATMが銀聯ICカードに対応しました。 関連記事:セブン銀行(7-11)ATMが銀聯ICカードに対応!引き出し額上限も10万円に引き上げ