銀聯カードとは、中国でもっとも広く使われているクレジット・デビットカードブランドです。
英語での名称は「UnionPay」となっており、日本でも「ユニオンペイ」と呼ばれることがあります。
世界でも屈指のカード決済プラットフォーム「銀聯」とは何者なのか、近年日本でもよく見かける「銀聯」カードに迫って見たいと思います。
中国の銀行連合「銀聯」
銀聯カードの「銀聯」とは2002年に中国政府主導で、中国人民銀行が中心となる形で設立された金融機関の連合、銀行間の決済ネットワークで、本部は上海に設置されています。
中国人民銀行は中国の中央銀行(日本の日本銀行に相当)で、中国銀行ではないことに注意してください。
銀聯が設立されるまでは、中国の銀行決済システムは各行バラバラのものを採用していたため、銀行間の送金や、同じ銀行でも省が違うと送金がうまくいかないなどの問題がしばしば発生していました。
そこで、システムやルールを統一することで銀行間の決済をスムーズにしようと設立されたのが、「銀聯」です。
銀聯設立の際に、銀聯加盟銀行が発行するキャッシュカード・クレジットカードには「銀聯」マークが付与されるようになり、銀聯カードを受け付ける商店にも同じく銀聯マークを掲示するようになりました。
銀聯カードとは?
そんな歴史的な経緯から、中国で発行されたほとんどのキャッシュカード(デビットカード)・クレジットカードにはほぼ必ず「銀聯」マークがついています。
国際的な取り決めにより、銀聯カードの先頭2桁は「62」と決められています。カード番号が「62」以外で始まるカード(銀聯+VISAのダブルブランドカード等)は、国外で利用する際は海外ブランドカードとして扱われることになっています。
銀聯は世界7大カードの1つ
世界のクレジットカードブランドには、7大クレジットカードブランドと呼ばれるものがあります。
7大クレジットカードブランドに含まれるのは、ビザ(VISA)、マスターカード(MasterCard)、JCB(ジェーシービー)、アメリカン・エキスプレス(American Express)やダイナース(Diners Club)、ディスカバーカード(Discover Card)、そして中国の「銀聯」です。
実は世界第2位のカードブランド
実は、銀聯カードはカードブランドとしては世界で第2位の規模(1位はVisa)となっています。
銀聯カードの発行枚数は既に10億枚を超え、銀聯加盟店も125の国や地域に1,000万店舗(そのうち海外加盟店は700万店舗)以上と、確かにかなりの規模のカードブランドとなっていることが伺えます。
特に中国では外貨の持ち出しに規制がかけられているため、中国の富裕層が買い物をするには銀聯カードが必須とも言える状況となっています。
そんな事情もあることから、中国人旅行者が多い香港、マカオ、シンガポールではほとんどすべてのクレジットカード取り扱い店で銀聯カードが使えるようになっています。
台湾・東南アジア諸国では銀聯カード対応率は50%以上、欧米や日本でも観光地や有名ブランドショップなどを中心に続々と銀聯加盟店が増えています。
銀聯カードのほとんどはデビットカード
中国人ならみな持っていると言っても過言ではない銀聯カードですが、中国ではクレジットカード審査(与信)の制度がまだあまり整備されておらず、クレジットカードを持つことのできるのは一部の富裕層に限られています。
そのため、銀聯カードのほとんどはデビットカード(買い物にも使えるキャッシュカード)として発行されています。
銀聯デビットカードは中国のどこでも使える
中国では日本以上に社会のカード化が進んでいますが、その理由は、最高額紙幣が100元(約1800円)と低い額面な上に偽札も多いことから、現金にはかなりのリスクがあるためです。
それで、中国では小さな店舗でも銀聯カードで支払いができるようになっています。実際に、調査によれば中国での銀聯カードの認知度は既に100%に達しているとのことです。
中国のスーパーなどに行くと多くの人が銀聯カードで買い物をしている様子を見ることができますよ。
銀聯の電子マネー「闪付」
中国銀聯では数年前から非接触ICカードを利用した電子マネー(日本のSuicaやnanacoに相当)の「闪付」サービスを開始しています。
この電子マネーは中国銀聯独自の規格を使用しているため、海外ではまだ加盟店がほとんどないようですが、今後利用できるお店が増えていくかもしれない、要注目のサービスです。
日本で銀聯カードが使えるのは
日本で銀聯カードが使えるATMには、セブン銀行、イオン銀行、ローソンATM、イーネットATM、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、ゆうちょ銀行の他に京都銀行やSMBC信託銀行などがあります。
また、最近では空港の売店、大手百貨店や大型ショッピングモール、家電量販店、ドラッグストアなどを中心に、日本でも非常に多くの店舗が銀聯カードでのショッピングに対応するようになっています。
日本の銀聯カード
銀聯カードは中国人が持っている、という印象が強いかもしれませんが、実は日本人でも作ることができます。
中国ではVisa, Master, JCBなどの海外ブランドのカードを受け付ける店舗が少ないため、中国旅行・中国出張・中国への赴任などの際に銀聯カードを作っておくと便利です。
日本の銀聯クレジットカード
日本で作れる銀聯クレジットカードには、以下の5種類があります。
日本の銀聯プリペイドカード
日本の銀聯プリペイドカードは以前にはトラベレックス銀聯カードやNEO MONEY銀聯プリペイドカードなどがありましたが、現在はすべてサービス終了となっています。
日本の銀聯デビットカード
さらに、ちょっと変わったところでは中国銀行や中国工商銀行の日本国内支店に口座を開くと、そのキャッシュカードには銀聯マークがついています。
このキャッシュカードは銀聯デビットカードとして、日本でも中国でも銀聯マークのついたお店での買い物に使うことができます。
日本人が中国で銀聯カードを作ることもできます
他にも、中国の銀行では外国人でも口座を比較的簡単に開くことができるので、もれなく銀聯キャッシュカード(デビット・カード)を発行してもらえます。
ただし、中国発行の銀聯カードを日本でも使いたい時は必ず銀行窓口で、磁気ストライプのついたカードに交換してもらいましょう。
銀聯カードの注意点
銀聯カードにまつわる注意点についてまとめてみました。
1.磁気ストライプのない銀聯キャッシュカードは日本で使えない
2015年以降に発行された銀聯デビット・カードには磁気ストライプ(カード裏面の黒い帯)がないものが多くあり、それらのカードは現在のところ日本では使用することができません。
2.銀聯カードの暗証番号は6桁
銀聯カードのセキュリティはかなり強く、暗証番号は他のクレジットカードやキャッシュカードと異なり6桁です。また、ショッピング時には暗証番号の入力だけでは承認されず、必ず暗証番号の入力に加えてサインをする必要があります。
また、最近では海外加盟店にて銀聯カードの「サインのみ」決済が可能になってきているとのことです。対応しているカードは銀聯カードでも一部のカードに限られていますが、必ずしも暗証番号の入力が必須ではなくなってきているようです。
3.1日/1年の引き出し額が制限されている
銀聯カードには中国の中国国家外貨管理局によって1日あたり/年間の引き出し限度額が決められています。2016年1月現在、制限額は1日1万元/年間10万元となっています。
4.銀聯カードを日本のATMで使う時には手数料がかかる
銀聯カードを使って日本のATMで引き出す場合、日本側のATM手数料の他に中国側銀行も「境外手続費」を徴収します。銀行によって0円~2000円と幅が広いので頻繁に利用する方は注意が必要です。
日本側手数料
- 1回あたり無料~110円
主な中国側手数料(詳しくは以下の関連記事をご参照ください)
- 定額制:中信銀行、民生銀行、光大銀行、ハルビン銀行、華夏銀行、浦発銀行、北京銀行、興業銀行等
- 定率制(定額+定率制):中国銀行、工商銀行、建設銀行、農業銀行、交通銀行、招商銀行、郵儲銀行、中国HSBC銀行等
POSを銀聯カード決済対応にする方法は?
自分のお店に中国人観光客がやってきて、「銀聯カード」を見せて、「使えるか?」とジェスチャーで尋ねられた、という経験をする方が増えてきているようです。
参考までに、コンビニエンスストアチェーンのローソンが発表した資料によると、ローソンの平均客単価は600円なのに対し、銀聯カード決済を導入した店舗では平均客単価が3000円以上となんと5倍以上になっているとのことです。
最近ではほとんどのカード決済会社が銀聯カードに対応していますから、一度POS会社やカード決済会社に相談して、銀聯カード対応が可能かどうか、尋ねてみると良いでしょう。